変 態 ― metamorphose ―【完】
なにがあったんだろう。
あのママが思い悩むというのが、どうも気にかかる。

ママはいつだって明るくて、たまに仕事の不満を言うときでも、ぜったいに面白おかしく話してた。
お笑い芸人の小話のような軽快さで。
だからそれは愚痴というよりもネタだった。

案外、そんなふうに話すことは難しい。

「私が出産やら子育てやらで忙しくて、話せなかったんでしょうね。毎日髪の毛を振り乱して必死にして、夜中にトイレにこもってひとりで泣いたりしたなあ……」

「あっちゃんが?」

「子どもができたら人格も変わるわよ。妊娠中も出産後も、自分が自分じゃないみたいだった。旦那の母親があれを食べろ、これを食べるなってうるさいのもストレスだったし」

嫁姑問題ってやつか。
そういうのって本当に現実であるんだなあ、と紅茶を飲みながら思った。

チカくんがサンタさんの奥さんからもらったというバタフライピーのハーブティーは、その真っ青な見た目に反してクセもなく、すっきりと飲みやすかった。
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