変 態 ― metamorphose ―【完】
次に会うときに綴も連れて行っていいかと訊くと、チカくんはすんなり引き受けてくれた。


――いち花の彼氏が? いいよ、もちろん。
読者の人に会えるのはすごく貴重なことだし、うれしい。
でも、なにを話せばいいだろう。


やわらかい声で苦笑していた。


綴とチカくんとあたし。
そして焼き肉。


なんて妙な組み合わせ。
嫌なわけじゃないけれど、なんだか落ち着かない。

「チカくんに変なこと言ったりしないでね」

「変って、例えば?」

「だから、あっちがうまいだのなんだの」

「言わないよ。俺、外では下ネタ言わないし」

一年以上つき合っているものの、綴とあたしはふたりで外に出かけたことはあまりない。
インドア人間である綴もあたしも、行楽地や商業施設には食指が動かない。

それになにより、日差しのなかを歩くより、閉ざされた空間でくっついている方が心が安らぐ。

綴とあたしが触れ合わないのは綴がベースを弾いているときくらいで、それ以外は爪先だったり、指先だったり、肩だったり、どこかしらが触れている。
それはもう無意識で、そうしていない方がおかしな気がした。

ママには「もっと甘えてくれたらいいのに」と子どもの頃から言われてきたけれど、綴にはまるで呼吸するように甘えている。
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