変 態 ― metamorphose ―【完】
どうして箱をあけてしまったんだろう。
どうしてソファーなんかに置きっぱなしにしてしまったんだろう。
どうしてチカくんを引き止めてしまったんだろう。

重なってしまったぐうぜんを数えたら、絶望に拍車がかかった。

もう、行き止まりだ。
ううん、行き止まり以前の問題だ。
行き先すらないんだから。

それでもまだ、あたしは抗う。

「変な誤解しないで。嘘だっていう証拠はあるの? それ、返して」

検査薬に向かって手を伸ばすと、カーペットの隙間に足を取られた。
つんのめって身体ごと飛び込めば、チカくんとあたしの身体は宙に浮き、どさりとソファーに落下した。

庇ってくれたのか、ぐうぜんか。
チカくんに包まれたあたしの身体は、どこにもぶつけずにすんだ。

大丈夫?
あたしを見上げ、チカくんが訊ねる。
あたしが答える代わりに、キリンがぷええと鳴いた。

「嘘は……。嘘は、つかないでほしいな」

寂しそうに眉を下げ、チカくんはつぶやいた。

落下の衝撃で破れてしまったビーズクッションから、ちいさな発砲スチロール状の球がさらさらとこぼれていく。
加速していくそれは、もう止められなかった。
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