変 態 ― metamorphose ―【完】
「……嘘じゃない。嘘じゃないもん」
子どもように言って、声を押し殺して泣いた。
嗚咽をこらえれば喉が苦しくて、身体がぶるぶる震えた。
チカくんの手は、そんなあたしの背中を不器用に撫でた。
そろそろと指先で撫でたり、手のひらでやさしく包むように撫でたり。
もっと泣いてしまいそうになって、あたしはやっぱり子どものように身を捩った。
ごめん。ちいさな声でチカくんが謝る。
チカくんに触られるのが嫌なわけじゃないよ、と言う代わりに、あたしはチカくんのシャツを両手でぎゅっと掴んで、その胸に顔を埋めた。
柔軟剤とミントの香り。
なぜか懐かしい気持ちでいっぱいになって、安堵して、また泣いた。
気がつけばビーズクッションから吐き出された球はこんもりと床に積もり、クッションカバーは生気は絞りとられたようにくたくたになっていた。
「ごめん、重かったよね……」
チカくんの身体から離れると、体温が薄まって、現実に引き戻された。
両の目から零れる涙は、もう残っていない。
そうしてとうとう、あたしは口をひらいた。
子どもように言って、声を押し殺して泣いた。
嗚咽をこらえれば喉が苦しくて、身体がぶるぶる震えた。
チカくんの手は、そんなあたしの背中を不器用に撫でた。
そろそろと指先で撫でたり、手のひらでやさしく包むように撫でたり。
もっと泣いてしまいそうになって、あたしはやっぱり子どものように身を捩った。
ごめん。ちいさな声でチカくんが謝る。
チカくんに触られるのが嫌なわけじゃないよ、と言う代わりに、あたしはチカくんのシャツを両手でぎゅっと掴んで、その胸に顔を埋めた。
柔軟剤とミントの香り。
なぜか懐かしい気持ちでいっぱいになって、安堵して、また泣いた。
気がつけばビーズクッションから吐き出された球はこんもりと床に積もり、クッションカバーは生気は絞りとられたようにくたくたになっていた。
「ごめん、重かったよね……」
チカくんの身体から離れると、体温が薄まって、現実に引き戻された。
両の目から零れる涙は、もう残っていない。
そうしてとうとう、あたしは口をひらいた。