変 態 ― metamorphose ―【完】
ずっと生理がきていないこと。
このことはまだ誰にも話していないこと。
綴にはぜったいに、ぜったいに、知られたくないこと。

チカくんはずっと黙って聞いてくれて、話し終えるとお茶を淹れてくれた。
半分ほど飲んで手のひらでティーカップを包めば、胸がほどけた。

泣き腫らした瞼が重たくて、うまく目が開けられない。

「検査するの、こわい?」

チカくんの質問に、あたしはうつむいて頷いた。

「でも、検査しないと次にどうするかを決められないよね」

あたしはまた頷く。

「いま、検査する?」

「えっ」

思わず声が出て、顔を上げた。

チカくんは落ち着いた様子であたしを見つめる。
落ち着きすぎて、まるでチカくんじゃないみたいに。

大人のちゃんとした男の人が、目の前にいる。

「いまじゃなくて、ひとりでいるときの方がいい?」

どっちだって嫌だ。

ひとりでいたって、チカくんがいたって嫌だ。
知りたくない。なにも知りたくない。

でも、そう言っていられないことだってわかってる。
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