変 態 ― metamorphose ―【完】
***
「四十物谷正愛さん……。めずらしい名字ですね。はじめて聞きました」
「呼びづらいから、昔から正愛とかチカって名前の方で呼ばれてる。女の子みたいだけど」
「たしかに四十物谷さんより、チカくんの方が合ってる感じがします。って、今日はじめて会ったばかりですけど。あ、さっき言ってたバンドなんですけど、今度ワールドツアーがあって」
牛タンを奥歯できゅうきゅう咀嚼しながら、談笑する綴とチカくんを眺める。
ふたりは挨拶を交わしてから、ものの十分ほどで打ちとけた。
自己紹介をした綴がバンドでベースを弾いていると言うと、話はそこから音楽の話題へと移り、あたしにはまったくわからない海外のバンドだとかアーティストだとか、ふたりの好みは完全に一致していた。
一回りほど年が離れていても、好きなことの前ではみんな同じ顔をする。
「すいません、お代わりお願いします。チカくんはお代わりはどうします?」
いつもよりピッチの早い綴が、二杯目のビールを注文した。
上気した耳に三つ並んだピアスが気持ちよさそうに揺れる。
フィンガリングとかピッグスクイールとかスクリームとか。
ふたりが口にする必殺技みたいな横文字がなんなのかはわからないけれど、綴が楽しいならそれでいい。
「四十物谷正愛さん……。めずらしい名字ですね。はじめて聞きました」
「呼びづらいから、昔から正愛とかチカって名前の方で呼ばれてる。女の子みたいだけど」
「たしかに四十物谷さんより、チカくんの方が合ってる感じがします。って、今日はじめて会ったばかりですけど。あ、さっき言ってたバンドなんですけど、今度ワールドツアーがあって」
牛タンを奥歯できゅうきゅう咀嚼しながら、談笑する綴とチカくんを眺める。
ふたりは挨拶を交わしてから、ものの十分ほどで打ちとけた。
自己紹介をした綴がバンドでベースを弾いていると言うと、話はそこから音楽の話題へと移り、あたしにはまったくわからない海外のバンドだとかアーティストだとか、ふたりの好みは完全に一致していた。
一回りほど年が離れていても、好きなことの前ではみんな同じ顔をする。
「すいません、お代わりお願いします。チカくんはお代わりはどうします?」
いつもよりピッチの早い綴が、二杯目のビールを注文した。
上気した耳に三つ並んだピアスが気持ちよさそうに揺れる。
フィンガリングとかピッグスクイールとかスクリームとか。
ふたりが口にする必殺技みたいな横文字がなんなのかはわからないけれど、綴が楽しいならそれでいい。