変 態 ― metamorphose ―【完】
「……いったい、いつから?」

あたしはできるだけ落ち着いたトーンで訊いた。
妊娠したんじゃないかとパニックを起こしていたあたしに、チカくんがそうしてくれたように。

かえちゃんはちいさく口をひらいた。

「夏休みの、前くらいから……」

メイクを変えたんだと思っていた。
日焼けをしたくないんだと納得していた。

かえちゃんが必死に取り繕っていたことに、なんの違和感も抱かなかったなんて。

気づける機会はいくらだってあったはずだ。

「ごめん」

あたしが言おうとした言葉を、かえちゃんが先に口にした。

「なんで……。なんで、かえちゃんがあたしに謝るの?」

「だって、こんなの見せられた方だってたまらないよね。あたし、電話切ったあとに思ったの。なんでいち花にうちに来る? なんて言っちゃったのかなって。はは……。本当に、やっぱりあたしって馬鹿だ」

渇いた笑い声が広がって、すぐに萎んだ。

ごめんね。ごめんね、かえちゃん。
チカくんよりもっと不器用に、あたしはかえちゃんを抱きしめた。

細い子だとは思っていたけれど、こんなにも脆くて折れてしまいそうなほどだとは知らなかった。
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