変 態 ― metamorphose ―【完】
「かえちゃん」

「ん?」

「また、すぐに会おうね」

「うん。バナナプリンパフェ、食べに行かなきゃね」

そう言って向けられたピースサインは頼りなく、このまま帰ってしまっていいのか、と胸がざわめく。

「ほら、電車くるよ。早く行って」

「うん……」

「また変なこと考えてるんでしょ? あたしは死なないから。ぜったい、大丈夫だから」

本当に?

ママだって、突然だった。
まさかもう二度と会えなくなるなんて、少しも思わなかった。

予告なくやってきたなにかに、自分の「ぜったい」をいともたやすく一瞬で奪われてしまうことは、きっと誰にだって起こりうる。

「ぜったい」なんて、きっとどこにもない。

「ほらほら。この駅、電車の本数少ないんだから逃したら大変だよ。早く早く!」

背中を押され、あたしは電車に乗った。
スマホを開き、きていないとわかっているのに綴からのメッセージを確認する。

綴はいま、どこでなにをして、なにを考えているだろう。
一方的に連絡をしているだけじゃなにもわからない。

綴とひとつになってしまえたらいいのに、と願ったあの夜。
やっぱりあたしは、綴のなかに溶けて消えてしまうべきだった。
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