変 態 ― metamorphose ―【完】
***
「部屋、掃除してくれたんだ」
血だらけの部屋でも想像していたのか、リビングを見たチカくんは驚いたように言った。
昨日の夜、あっちゃんとあたしは掃除をして、猫をペットホテルに預けた。
かわいそうだとは思ったけれど、うちのアパートはペット禁止で、あっちゃんの旦那さんは猫アレルギーだった。
「ペットホテルには明後日まで預かってもらうように頼んであるけど、もう少し延ばす?」
「いや、猫の世話くらい平気だよ」
猫のいないキャットタワーは空っぽのお城のようだった。
誰もいない、音も温度もない、さみしいお城。
「あの猫、雄だったんだね。あたしにはすごく感じ悪くて、綴には愛想いいから雌かと思ってた」
「おれにもそうだよ。そんなに愛想よくはされてない」
「飼い主なのに?」
「仕方ないよ」
つい綴の名前を口にしても、チカくんは顔色を変えなかった。
それどころか軽い笑みを浮かべて「綴くん、うらやましいな」と言う。
まるで昨日の夜のことなんて、なにもなかったように。
チカくん。
縋るように呼びかけ、頭を下げた。
「部屋、掃除してくれたんだ」
血だらけの部屋でも想像していたのか、リビングを見たチカくんは驚いたように言った。
昨日の夜、あっちゃんとあたしは掃除をして、猫をペットホテルに預けた。
かわいそうだとは思ったけれど、うちのアパートはペット禁止で、あっちゃんの旦那さんは猫アレルギーだった。
「ペットホテルには明後日まで預かってもらうように頼んであるけど、もう少し延ばす?」
「いや、猫の世話くらい平気だよ」
猫のいないキャットタワーは空っぽのお城のようだった。
誰もいない、音も温度もない、さみしいお城。
「あの猫、雄だったんだね。あたしにはすごく感じ悪くて、綴には愛想いいから雌かと思ってた」
「おれにもそうだよ。そんなに愛想よくはされてない」
「飼い主なのに?」
「仕方ないよ」
つい綴の名前を口にしても、チカくんは顔色を変えなかった。
それどころか軽い笑みを浮かべて「綴くん、うらやましいな」と言う。
まるで昨日の夜のことなんて、なにもなかったように。
チカくん。
縋るように呼びかけ、頭を下げた。