変 態 ― metamorphose ―【完】
「今回のこと、ごめんなさい……」
泣きだしそうなひどい声。
こんなふうに謝るのは卑怯だ。
こんなの、赦しをもらって楽になりたい人間の謝り方だ。
自分の弱さを見せて、相手の優しさにつけこんで。
「顔、上げて」
大きな手が、あたしの肩をそっと支える。
そのあたたかさに心がほどけかけて、振り払うように首を左右に振ると、チカくんは身体を屈めた。
ちいさな子どもと話す親のように、あたしに目線を合わせる。
「謝ってるのは、怪我のこと?」
唇をぎゅっと結んで首を縦に振った。
「怪我のことはいいよ。でも、嘘はやめてほしかった」
「つ、綴のことは……」
「おれはいち花との距離を間違っていたのかもしれない」
チカくんはばっさりと、温度のない声で言った。
さっきまで繋いでいた手をとつぜん離されたように、不安に襲われる。
いっしょに心地よく宙に揺られていたはずの手は、途端に遠くなった。
泣きだしそうなひどい声。
こんなふうに謝るのは卑怯だ。
こんなの、赦しをもらって楽になりたい人間の謝り方だ。
自分の弱さを見せて、相手の優しさにつけこんで。
「顔、上げて」
大きな手が、あたしの肩をそっと支える。
そのあたたかさに心がほどけかけて、振り払うように首を左右に振ると、チカくんは身体を屈めた。
ちいさな子どもと話す親のように、あたしに目線を合わせる。
「謝ってるのは、怪我のこと?」
唇をぎゅっと結んで首を縦に振った。
「怪我のことはいいよ。でも、嘘はやめてほしかった」
「つ、綴のことは……」
「おれはいち花との距離を間違っていたのかもしれない」
チカくんはばっさりと、温度のない声で言った。
さっきまで繋いでいた手をとつぜん離されたように、不安に襲われる。
いっしょに心地よく宙に揺られていたはずの手は、途端に遠くなった。