変 態 ― metamorphose ―【完】
「なにそれ……。どういうこと?」

「もっと距離をとってつき合うべきだった。ずっといち花に甘えてた。綴くんのことは、おれに責任があるよ」

「でもっ」

「否定できないんだ、綴くんに言われたこと。言われてから気づいた……なんて、言い訳にしか聞こえないだろうけど、でも、そうなんだ。自分でもこんなことは異常だって思う。だから、これからはもう、いち花とは……」

その瞬間、目の前が真っ白になって、遠くなってしまった手が完全に見えなくなった。
もう、その手を差し伸べてはもらえない。

あたしがどんなに縋ろうとも。

「昨日、綴くんから連絡があったんだ」

「綴から?」

「すごく後悔してた。もういいって言ったんだけど、それでもずっと謝ってくれて」

ほっとした。なにも連絡がないままなんて、綴がどこかに消えてしまったようで、こわくてたまらなかった。

「もしかして、いち花には連絡は……」

「うん、あたしにはなにもない。メッセージも電話も、なにもない」

「いち花のこと怖がらせたって、気にしてた。待ってれば、きっと連絡くるよ」
< 277 / 286 >

この作品をシェア

pagetop