変 態 ― metamorphose ―【完】
「どれくらい会ってなかったんですか」
「二十年くらい」
「えっ、そんなに? それでよくお互いにわかりましたね」
「おれの背が高いから、目につきやすかったんじゃないかな」
「そうだ。チカくんって身長どれくらいですか。俺より高い人ってあんまりいないから、外でチカくん見かけたときちょっとショック受けました」
おどける綴に、チカくんは遠慮がちに百八十五と告げた。
赤ちゃんのくせにチカくんはでかい。
「女の人って二十年も経ったらけっこう雰囲気とか変わってそうですけど、チカくんはすぐにいち花ママのことわかったんですか」
「すぐにわかったよ。きれいだから」
微かな笑み。
それでも瞳は雄弁で、うっとりと愛を物語っていた。
綴もそれに気づく。
「いち花ママ、そんなに美人なんですか」
「あたし、トイレ行ってくるっ」
立ち上がると、思いのほか椅子もテーブルも大きく揺れた。
もっと静かに立ちなさい、とまるで親のように注意する綴から目を逸らしてトイレへ向かった。
わずかに胃がムカムカする。
カルビの食べ過ぎか、タレのつけ過ぎか――なんて、責任転嫁をする。
「二十年くらい」
「えっ、そんなに? それでよくお互いにわかりましたね」
「おれの背が高いから、目につきやすかったんじゃないかな」
「そうだ。チカくんって身長どれくらいですか。俺より高い人ってあんまりいないから、外でチカくん見かけたときちょっとショック受けました」
おどける綴に、チカくんは遠慮がちに百八十五と告げた。
赤ちゃんのくせにチカくんはでかい。
「女の人って二十年も経ったらけっこう雰囲気とか変わってそうですけど、チカくんはすぐにいち花ママのことわかったんですか」
「すぐにわかったよ。きれいだから」
微かな笑み。
それでも瞳は雄弁で、うっとりと愛を物語っていた。
綴もそれに気づく。
「いち花ママ、そんなに美人なんですか」
「あたし、トイレ行ってくるっ」
立ち上がると、思いのほか椅子もテーブルも大きく揺れた。
もっと静かに立ちなさい、とまるで親のように注意する綴から目を逸らしてトイレへ向かった。
わずかに胃がムカムカする。
カルビの食べ過ぎか、タレのつけ過ぎか――なんて、責任転嫁をする。