変 態 ― metamorphose ―【完】
ぱらぱらと観客が去っていくステージ前。
薄墨が滲む空の下、木枯らしが熱気をさらう。
駅とビル群を背景に組まれた野外ライブステージは非日常的で、異様な空気を放っていた。
ライブを見ていた女の子たちは、まだまだ興奮冷めやらぬ様子。
きらきらと瞳を輝かせ、全身を震わせている。
バンドのロゴが入ったタオルを首から下げているということは、告知一切なしのゲリラライブといってもどこかから情報は洩れているのだろう。
「やばいやばい! めっちゃよかった!」
「思ったよりよくない? あの新しいベースの人」
「うんうん。顔だけかと思ってたけど」
「ちょっと粗削りだけど。まあ、まだ若いしね」
どう見ても綴より若い女の子たちは、どこか得意気に言った。
ほら。大丈夫だよ、綴。
ちゃんと伝わってるよ。
本人にそう伝えたいと思ったけれど、あの日から綴とは一切連絡をとっていなかった。
――これ以上、俺の嫌なところを見せる前に……。ごめん。
別れの言葉は短かく、ひどく一方的だった。
なにそれ。勝手だよ。
哀しみよりも怒りが先に爆発して、そのうちすぐに怒りを凌駕する哀しみが襲ってきた。
薄墨が滲む空の下、木枯らしが熱気をさらう。
駅とビル群を背景に組まれた野外ライブステージは非日常的で、異様な空気を放っていた。
ライブを見ていた女の子たちは、まだまだ興奮冷めやらぬ様子。
きらきらと瞳を輝かせ、全身を震わせている。
バンドのロゴが入ったタオルを首から下げているということは、告知一切なしのゲリラライブといってもどこかから情報は洩れているのだろう。
「やばいやばい! めっちゃよかった!」
「思ったよりよくない? あの新しいベースの人」
「うんうん。顔だけかと思ってたけど」
「ちょっと粗削りだけど。まあ、まだ若いしね」
どう見ても綴より若い女の子たちは、どこか得意気に言った。
ほら。大丈夫だよ、綴。
ちゃんと伝わってるよ。
本人にそう伝えたいと思ったけれど、あの日から綴とは一切連絡をとっていなかった。
――これ以上、俺の嫌なところを見せる前に……。ごめん。
別れの言葉は短かく、ひどく一方的だった。
なにそれ。勝手だよ。
哀しみよりも怒りが先に爆発して、そのうちすぐに怒りを凌駕する哀しみが襲ってきた。