変 態 ― metamorphose ―【完】
ぽっかりと浮かぶ半透明の月に、駅まで続く等間隔の街灯。
青緑色の光に誘われた虫たちが飛び交い、囁き合う。
お前は嘘つきだ、と。
年齢も恋愛経験も、あたしは男の人の前では実際より高く言ってしまう。
綴は自分があたしの三人目の彼氏だと思っているけれど本当は二人目の彼氏で、綴の記憶どおり、はじめて会ったとき十九だったあたしは二十歳だと嘘を吐いた。
いつからこうしているだろう。
いつから男の人には嘗められないように、侮られないように、と構えているだろう。
そんなちいさな嘘で、なにかが大きく変わるわけじゃない。
それなのに気づけば癖になってしまった。
思考回路を飛び超えて吐く、意味のない空気のような嘘。
おそらくそれは、ママを取り巻く男の人たちの影響だった。
ママの職場で開かれた、お花見やバーベキュー。
家族連れで参加する人も多く、ちいさい頃のあたしもよく連れていかれた。
――いち花ちゃん、お菓子食べる?
――何年生? 学校は楽しい?
――ママのご飯でなにがいちばん好き?
たくさん話しかけてくれる、お菓子をくれるやさしい人たちだな、と思った。
だけどすぐに、彼らがあたしを通してなにを見ているのかわかった。
青緑色の光に誘われた虫たちが飛び交い、囁き合う。
お前は嘘つきだ、と。
年齢も恋愛経験も、あたしは男の人の前では実際より高く言ってしまう。
綴は自分があたしの三人目の彼氏だと思っているけれど本当は二人目の彼氏で、綴の記憶どおり、はじめて会ったとき十九だったあたしは二十歳だと嘘を吐いた。
いつからこうしているだろう。
いつから男の人には嘗められないように、侮られないように、と構えているだろう。
そんなちいさな嘘で、なにかが大きく変わるわけじゃない。
それなのに気づけば癖になってしまった。
思考回路を飛び超えて吐く、意味のない空気のような嘘。
おそらくそれは、ママを取り巻く男の人たちの影響だった。
ママの職場で開かれた、お花見やバーベキュー。
家族連れで参加する人も多く、ちいさい頃のあたしもよく連れていかれた。
――いち花ちゃん、お菓子食べる?
――何年生? 学校は楽しい?
――ママのご飯でなにがいちばん好き?
たくさん話しかけてくれる、お菓子をくれるやさしい人たちだな、と思った。
だけどすぐに、彼らがあたしを通してなにを見ているのかわかった。