変 態 ― metamorphose ―【完】
やっぱりね、と感情なく思った。
交際を反対されて家を飛び出した娘の葬儀だ。
来なくたって、おかしくはない。

期待なんてものは最初からなかった。

「四十九日にはチカは呼ぶの?」

「そういうの、よくわからなくて。ママもそこまではノートに書いてなかったんだよね」

お葬式がぜんぶ終わってからママの訃報を知ったチカくん。
もっと早くあっちゃんに連絡をすればよかった、と後悔していた。

それなら四十九日には招いた方がいいんだろうか。
それとも、そういうのは血縁者だけでやるべきなのか。

血縁者――なんて、あたししかいないけど。

「もちろん、私は行くからね。スーツはちょっときついけど」

「ありがとう、あっちゃん」

いえいえ、と言って、あっちゃんはつるりとゼリーを食べた。
気づけばアイスティーはもう空だった。

「おかわり淹れるね」

「ううん。そろそろ帰るから」

「もう帰るの?」
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