変 態 ― metamorphose ―【完】
「いちばん下の息子が夏期講習だのなんだので、ちょっとバタバタしちゃってて。あーあ、ひとりくらい女の子がよかったな。家じゅう汗くさくって嫌になる。洗濯機回すだけで疲れるわ。ごめんね、いち花。また今度来るから」
「いつでも来て。あ、でも予告してから来てね。いつもはもっと散らかってるから」
「彼氏がいるかもしれないから、じゃなくて?」
違うよ、と声を尖らせると、あっちゃんはけらけら笑った。
「今日もチカと会うんだよね? よろしく伝えておいて」
「わかった」
駅まで見送ろうとしたけど、あっちゃんは暑いからいい、と断った。
玄関の閉まる音がやけに大きく耳の奥まで響いて、胸には嫌な余韻がズンと残った。
ひとりには慣れていたつもりだった。
もともとママは仕事で忙しかったし、ひとりで留守電することは日常だった。
それなのに、あっちゃんの笑い声と体温が消えた部屋はひどく寂しさが充満していて、窒息しそうだった。
あたしは待ち合わせよりも、だいぶ早くうちを出た。
「いつでも来て。あ、でも予告してから来てね。いつもはもっと散らかってるから」
「彼氏がいるかもしれないから、じゃなくて?」
違うよ、と声を尖らせると、あっちゃんはけらけら笑った。
「今日もチカと会うんだよね? よろしく伝えておいて」
「わかった」
駅まで見送ろうとしたけど、あっちゃんは暑いからいい、と断った。
玄関の閉まる音がやけに大きく耳の奥まで響いて、胸には嫌な余韻がズンと残った。
ひとりには慣れていたつもりだった。
もともとママは仕事で忙しかったし、ひとりで留守電することは日常だった。
それなのに、あっちゃんの笑い声と体温が消えた部屋はひどく寂しさが充満していて、窒息しそうだった。
あたしは待ち合わせよりも、だいぶ早くうちを出た。