変 態 ― metamorphose ―【完】
身体を通して甘えることはできても、言葉で甘えるのが苦手なあたしは、拙い想像力でシミュレーションしてみる。
三回ほどそうしてから、バッグからスマホを取り出して電話をかけた。綴はすぐに出た。

「いち花。どうした?」

「チカくんとご飯食べるんだけど、綴も……」

綴も来る? 無理にとは言わないけど、と言おうとして、口をつぐむ。

無理にとは言わない、の一言は余計かもしれない。
そんなことを言ったら、会いたくて仕方ない、の裏返しだと思われるかもしれない。

考えあぐねいていると「行く!」と大きな声が聞こえた。
迷いは一瞬で消えて、とたんにお腹の底がむずむずしはじめる。

来て。今すぐ、来て。

「いち花、いまどこ? すぐに行く」

「まだ誘ってないよ」

意地悪く笑ってから、あたしは居場所を告げた。
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