変 態 ― metamorphose ―【完】
思い浮かべているのは毎日眺めた地元の海? それとも、ママ?
なんでもかんでもママに繋げて考えてしまう。
チカくんの三十七年間にママ以外の女の人だっていただろうに、他の女の人とチカくんを繋げて考えられない。
チカくんから擦れた感じがしないからだろうか。
「で、いち花はいつ?」
はっとして、慌てて視線を綴に移した。声が裏返る。
「い、いつって?」
「海だよ、海。最後に海に行ったのは?」
「ああ……。綴と同じで小学校の低学年とか、そのくらい」
「そしたら、いち花も十年以上ぶりか」
あまり覚えていないけど、小学二年生とか、そのくらいだった気がする。
そうだ。ママの職場の人たちとバスで行って、なんで水着持ってこなかったの? とママにしつこく言う男の人がいた。
その当時、人気だった俳優に似せた髪型をした、見た目はわりとかっこいい男の人。
だけどその爽やかな笑顔の目の奥は、なんだかぎらぎらして気持ち悪かったのを覚えてる。
着ませんよ、とママは笑顔でぴしゃりと言った。
なんでもかんでもママに繋げて考えてしまう。
チカくんの三十七年間にママ以外の女の人だっていただろうに、他の女の人とチカくんを繋げて考えられない。
チカくんから擦れた感じがしないからだろうか。
「で、いち花はいつ?」
はっとして、慌てて視線を綴に移した。声が裏返る。
「い、いつって?」
「海だよ、海。最後に海に行ったのは?」
「ああ……。綴と同じで小学校の低学年とか、そのくらい」
「そしたら、いち花も十年以上ぶりか」
あまり覚えていないけど、小学二年生とか、そのくらいだった気がする。
そうだ。ママの職場の人たちとバスで行って、なんで水着持ってこなかったの? とママにしつこく言う男の人がいた。
その当時、人気だった俳優に似せた髪型をした、見た目はわりとかっこいい男の人。
だけどその爽やかな笑顔の目の奥は、なんだかぎらぎらして気持ち悪かったのを覚えてる。
着ませんよ、とママは笑顔でぴしゃりと言った。