イケメン外科医が激しく寵愛してきます。【メイン更新中】



 「そ、それってどういうことですか?」と聞く幸野に事情を説明する。事の経緯を話し終えると、幸野の表情はすっかり暗くなってしまった。けれど、すぐにその表情は一変。何を思ったのか幸野は俺を小馬鹿にしたように、

「久我先生も飛ばされて、こっちにきたんですか?」


 俺も飛ばされたと思っていた。


 俺は本院で五十嵐先生とMSFで活動する前と活動した後で組んでいた。MSFに行く前は「遅い」だの「もっと早くペースを上げないと患者持たないぞ!」だの色々言われはしたけど、MSFから帰ってきた後は何も言われなくなった。


 ――というか、ただ単に俺が五十嵐先生のペースについていけるようになった。そこから自然と五十嵐先生と組むことを任されることが増え、五十嵐先生と組む時は【ゴールデンコンビ】という異名が付けられた。


「ちげぇよ。ここでの心臓外科のオペ実績のために呼ばれたんだ!」


 なんとなく、ゴールデンコンビと呼ばれていた、だなんて恥ずかしくて言えなかった。代わりに唇がタコの形になるように幸野の頬を強く掴む。


 幸野は俺のことを微塵も意識していないと分かってはいたけれど、本院に戻ることに嬉しそうな表情を向けるのが納得いかない。


「安心しろ、俺が本院に戻ることになったら、おまえも一緒に連れて行くからよ」


 いつもはすれ違うだけで、こんな風に幸野と会話したのは初めてだった。


 俺は少しだけ幸野に近づけただろうか。

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