イケメン外科医が激しく寵愛してきます。【メイン更新中】


 藤田にチラッと視線を送るが、藤田は微動だにしない。全然動く気配がない。


 何もしないんならせめて患者に声くらいかけてくれよと思っていると、

「ズボンのポケットに入っていた免許書を拝見したところ、患者の名前は松原久志さんです!」


 俺が声を掛けようとしていることを察知したように救急隊が報告してくれた。


「えー」


 微動だにしなかった藤田はやっと声を出した。松原さんに声を掛けてくれるとばかり思っていたのに、


「何でズボンのポケットに直で免許書入れてるんだろう?」


 皆がどうでもいいだろう、そんなことは、と思いたくなるようなことを言い出した。 


 救急隊は「失礼しました」と、藤田に謝る。そして、「正確には財布の中の免許書です」と訂正すると、「ちゃんと報告してくれなきゃ分かんないしょ!」と、これまたどうでもいいことでマウントを取っている。


 藤田の様子に呆れながらも、「松原さん、聞こえますか!?」と問いかけた。


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