イケメン外科医が激しく寵愛してきます。【メイン更新中】
美味しそうにおにぎりを頬張る幸野を見て、そうだよな……と、ため息を吐く。
さっさと忘れようと、俺も朝食を胃に押し込むように食べる。
風呂から出た幸野の、髪を急いで乾かし、腕を引っ張りながら急かすように家を出る。
「ちょ、久我先生早いですって!」
「急げって、風呂も長ぇし、間に合わないだろ!」
「まだ6時30分じゃないですか! 私、7時に家出てますけど!?」
「…………は、はあ!? おまえ昨日早かったのはなんなんだよ」
「あれはたまたま目が覚めただけで、偶然です!」
電車に乗り込み釣り革に捕まる。今日も満員だ。人混みに潰されそうな幸野を抱き寄せる。
「俺の服掴んでていいから」
「……あ、ありがとうございます」
例えキスのことを覚えていなくても、こうやって少しずつ意識させていけばいい。
抱き寄せているせいかもしれないと思っていたけれど、幸野はやたら俺の服に顔を近づけている。
「おい、幸野、酔ったか?」
「いえ。久我先生、いい匂いするなあって。もし逆の立場なら久我先生のお尻、触っていたかもしれません」
思考がセクハラ中年男性並みの幸野のせいで、恋愛に発展できる予感がしない。