離婚を決意したはずが、スパダリ社長の独占愛によって離してはくれません!
服装と場所が合わないんじゃないかと思いながら車を降りた。目の前にあるのは、何度か利用したことがある料亭【花月】だ。
「さぁ、行きましょう! 光寿ちゃん」
【花月】は、歴史ある建造物を現代風にリノベーションをした料亭だ。お店に入れば、年代物の貴重な器や美術品に彩られた趣ある店内が広がっている。
以前は、私が短大卒業した時と就職祝いで来たのが最後だったかな……なんて感傷に浸っていると、担当の仲居さんに部屋まで案内される。
案内されたのは【金盞花の間】と書かれている木のプレートが掲げられている個室だった。中に入ると、外観では小さい個室だと思ったのだが、結構広くて驚いて固まっていると「ほら、光寿ちゃん」と声をかけられて奥に入り下座に座った。
テーブルの上には、食事の準備がもうセッティングされいる。手前には箸置きの上には割り箸があり、おしぼりも置かれている。
四角のかごには前菜が四つ入っており隣の皿にはお刺身が盛られていた。
それを眺めていると伯母様の「来ないわねぇ」と言葉を小さな声で呟き始めた。