離婚を決意したはずが、スパダリ社長の独占愛によって離してはくれません!
玄関を通り、目の前で止まっていた高級車に乗せられると彼も隣に乗り込む。彼は行くように指示をするが、さっき一緒にいた人はいいのか不安になった。
「さっきの人は車なくて大丈夫ですか?」
「あぁ、あいつは大丈夫だ」
「そうなんですか。あのっ、私、あの人に借金返済してもらう約束で……」
「知っている。その借金は、全て俺が返済をした。さっき投げた封筒には返済証明書が入っている。あの藤並は、借金返済なんてできる筈はない。光寿さんは騙されたんだよ、あの二人にね」
「……っ……」
ショックなんだか悲しいとか怒りとかそういう感情がぐるぐる回り出す。だけどそれがどの気持ちに当てはまるかはわからなかった。
まだ混乱していて下を俯くと私の頭に彼が手を置いた。するとすぐに子どもをあやすように撫でた。普通は、怒るかもしれないけど騙された事実より、今の私にはその優しさが心に沁みて……お父様が亡くなって、初めて泣いてしまった。