離婚を決意したはずが、スパダリ社長の独占愛によって離してはくれません!



 ***


 夜になり、私は以前記入した離婚届をすぐ出せる場所に置いて南都さんが帰宅するのを待っていた。

 早く帰宅する時は、十八時半くらいには帰ってくるはず……だからもうすぐ帰ってくるだろうと思っていると、車の音がした。窓からそっと覗くと南都さんが駐車している様子が見える。


「……はぁ、もう、これで終わり、なんだなぁ」


 そんなことを呟いて玄関に向かう。するとすぐにドアが開いて「ただいま」と南都さんがいつものように笑いかけてくれた。



「お帰りなさい、南都さん」

「今日も出迎え、ありがとう」

「……いえ」


 きっと、こうして笑顔で優しい声で接してくれるのはきっとこれで最後だ。このまま、彼の優しさをずっと独り占めしたくなるけど、それはだめだ。


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