奈落の果てで、笑った君を。
よしわら。さいこう。
どんな場所なんだろう。
いいなあ、行ってみたいなあ。
この檻の外には、なにがあるんだろう。
───それから約、20年。
生まれ落ちてから70年という長い長い歳月を、少女は檻のなかで過ごした。
「お逃げください上様…!奥方様も…っ!!」
「水だ!水を用意しろ…!!」
「お前ら何をしておる!!はやく避難せんか!!」
きっかけは、ほんの些細なこと。
カンカンカンカンと聞こえてくる音。
ドタバタ、ザザザッ、ゴオオオオと、熱風が届いてくる。
「待てっ、あやつはどうする…!!まだ檻のなかに居るぞ!!」
「ええい!どうせ化け物の子じゃ!!放っておけっ!!」
「だ、だがっ」
「いいんじゃ!!このほうが徳川も安心するに決まっておろう…!!」
ペキペキペキと、炎に焼かれてゆく城。
木製の牢が強く燃え上がる熱に倒れるのは時間の問題。