奈落の果てで、笑った君を。




だとしても鍵が開くわけでもなく、固く閉ざされたまま。


グラッ───、

一瞬、柵が傾いた。



「っ!」



思わず端にうずくまっていた身体を起こして、本能のまま柵まで向かう。


あつい、熱い、このままでは焼かれてしまう。

こんなにも熱い感覚は初めてだ。

世の中にここまで肌をも燃やすようなものが存在するんだ。



ガッ───!!



柵を蹴ってみる。

こんなことをすると、いつもであれば見張り役が手にした木の棒で打たれる。

でもそんなものが今日は無い。


すると余計に傾いた柵は、とうとう形を崩した。



「うあっ!」



こんな色を見たのは初めてだ。
何色というんだろう、この色は。

きれいだ、こんなにも綺麗なものがあったんだ。



「すごいっ、すごい……!」



なにより明るい。

メラメラと燃え上がる炎に反射して、うっすらと自分の影が見える。



< 11 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop