奈落の果てで、笑った君を。
「やけん、この国の民が平等に生きられるよう、未来をより良うさせるため、ワシは動くがよ」
ああ、この男は、俺たちの敵だ。
250年以上つづく江戸幕府、つまりは徳川に休止符を打とうとしているんだ。
そしてそれを、そんな反幕府勢力を取り締まるための組織として立てられたのが───俺の属する見廻組。
「そのためにゃあ、まずはこの国を統一させ、みんなで力を合わせ、それから異国に対抗するがよ。
どいて同じ日の本に生まれていがみ合わんとならんがじゃ」
俺は今日は非番だ。
巡察に来ているわけでもないし、ただ気の合う男と出会って他愛ない会話を交えただけ。
誰も幕府には逆らえず、生まれた身分で幸せが決まる。
そんなものはおかしな話だ。
この国の民が平等に生きられるよう、未来をより良くさせるため、動く───。
それを聞いて反論したいと思う人間が、果たして存在するのだろうか。