奈落の果てで、笑った君を。
「あ!気合いと根性だけやのぉて、諦めん心も大切がぜよ!」
「…それがあなたにとって、生きていく上での思想ということですか」
「ほうじゃほうじゃ!」
俺みたいに黄昏ている人間を見つけては、今のように教えていそうだと。
ふっと、知らないあいだにも吹いてしまった。
けれど彼はそんな小さなことを気にするタチではない。
これから、とてつもなく大きなことを成し遂げようとしている男なのだ。
そんな癖の強い男が去って行き、再びひとりになった河川敷にて、俺は辺りを見渡した。
「…やはり今日も居ないな」
橋の下、朱花がいつも会いたがっている老人とやらは。
あれから共に外出するときは必ずここを通って探すのだが、1度も見かけたことはなかった。
幻か妖怪でも見たんじゃないか?
朱花ならありえないことでもなさそうだと、ここでも骨格は上がる。