奈落の果てで、笑った君を。




「ねえクソガキ、それなに?なぁんでそんなことしちゃうのー」


「おはげ!」


「おっとー?それはこの国の5割を貶してんのかい。おはぎ、だから。てか餡と米が逆なんだってば。外側を米にしてどーする」


「ははは、楽しくていいじゃないか。どこかにこういう逆のおはぎもあるかもしれないからね」


「うん!これノブちゃんのぶん!」



それから屯所に戻っても見当たらないと思えば、調理場に腹を空かせる甘い香りと温かな声が広がっていた。

そっと顔を覗かせてみると、男ふたりに囲まれた真ん中で袖を捲っては熱心に何かを作っている少女の姿。


すると、「お。」と、さっそく振り返ったのは早乃助さん。



「おかえりー。お腹すいてる?おはぎ作っててさ今」


「…なにかの祝い事ですか」


「いーや。ここのところ尚晴の元気がないからって、朱花が止まらなかったわけよ」



さすがにひとりでやらせるのは危なすぎると察知したふたりが付き添った、ということだろう。

もしかすると佐々木さんの命令だったのかもしれない。



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