奈落の果てで、笑った君を。
第二章
似ている者
ひらひらと舞い落ちる薄紅色の花びら。
木は何百年も存在するのに、花びらはすぐに散ってしまう。
あのね、それはサクラって言うんだって。
これも尚晴が教えてくれたの。
そのサクラも気づけばすべて地面に落ちて、色を失ってきた頃。
「おいっ、まじか!まじか!!」
「すげえっ!こりゃあ冥土の土産だな!」
「ああ!家族に手紙出さねェと!!」
過ごしやすい朝は、決まって寝過ごす。
いつも尚晴は無理に起こそうとはしないし、大体は鼻をくすぐる温かな匂いに目が覚めるのだ。
けれど今日はそんなものよりも先に、男たちの興奮している足音が聞こえた。
「お、ようやくお目覚めかい寝坊助さん」
まだ眠っていたい感じもしたけれど、とうとうお腹も鳴ったことで、しばらくして布団を出た。
「…桂、どうしてそんなに気持ち悪い顔してるの?」
「はっはー、起きてきて2秒で喧嘩売ってくるとか何事なんだよ。
またお兄さんを怒らせる気かなー?まったく学ばないねえ、この娘は」