奈落の果てで、笑った君を。




ぽかぽかと良い天気だから、こんな日は外をお散歩して走り回りたい。

どうしてそんなにも将軍様に対してピシッとするんだろう、みんな。


彼は何をした人なの?
雨を瞬時に止めてしまうような力があるの?

それとも手から火を出したり、雪を降らせたりできる?



「尚晴、尚晴」



今度はくいっと、左隣に立っている袖を引っ張った。

「どうした」と言って、すぐに顔を近づけてくれるのが尚晴。



「どうして見廻組は新撰組みたいに羽織がないの?」


「…それは、必要ないからだ」


「必要ない?どうして?」



あったほうが格好いい。

道を歩くだけで「見廻組だ」って分かるし、暗い場所でも目立てそう。



「そんなことしなくても立派な武士だからだよ、俺たちは」



言葉に詰まらせた尚晴を助けるように、桂は小馬鹿にするみたく答えた。


へーすけも言っていた。

“武士じゃないからって馬鹿にされつづける”って。



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