奈落の果てで、笑った君を。
「…でもね?歳を取らないわけじゃないんだよ?わたしは…普通の人よりゆっくりゆっくり成長するだけだからっ、最後は……死ぬの」
「…なら、そのときは俺とまた会えるな」
「───…うんっ!…尚晴、……ありがと」
奈落の果てで、笑った君を。
俺は、俺が生きているかぎりは。
命に代えてでも守りたいと思った。
「今の徳川は朱花を最初から存在しなかった者として扱っています。だからこそ、私たちは油断ならない。
これからはこの組も今以上に固めなければいけませんね」
「…朱花だけは、俺が必ず守ります」
「……頼みましたよ、尚晴」
「───はい」
そして慶應元年、6月。
目立った隊規はとくに無かった見廻組だったが、とうとう「京都見廻役勤中心得方」が定められる。
これは組士の心構えや行動規範を改めるために示されたが、それは建前。
本音は、ひとりの少女を守るためだけに佐々木 只三郎が発案したものだった。