奈落の果てで、笑った君を。
もっともっと、なんて言うように頬を寄せてみる。
ひんやりしていて冷たくて気持ちがいい。
「………」
「しょうせ…?」
ぼうっとした眼差しで、わたしの頬に触れてくる。
手の甲でさらりと撫でたかと思えば、今度は手のひらで包み込むようにさすったり。
「んっ…、しょうせい、首のとこもあついの…」
「………」
撫でやすいように、くいっと首を見せる。
すると、ごくりと、尚晴の喉のなかにも住む動物さんが動いた。
「………」
なぜか、手じゃないものが向かってくる。
わたしに影を落としたのは、まさかまさかの尚晴そのものだった。
「え…、しょうせー…?なにしてるの…?」
「…さっき水を飲んだ。だから……たぶん、舌のほうが冷たい」
「した…?舌って、どーして…?」
身動きの取れないわたしの両側、手がつかれている。
重さをかけないよう、ちゃんと隙間は作られていた。