奈落の果てで、笑った君を。
「───……ばくはつ…?」
それから目を覚ましたとき。
行灯もついていないというのに、ほんの少し開いた襖の隙間から漏れてくる明かりと。
ドン、ドン、ひゅ~~~、ドーーン!
という、心臓に届いてはドキドキしてくる大きな音。
「───朱花、具合はどうだい?」
「只三郎!これなあに!」
「ふふ。良くなったみたいですね」
身体の怠さも、熱いのに肌寒い感覚も、スッキリと抜けている。
軽くなった足を跳ねさせて音の鳴るほうへ向かえば、縁側に並んだ男たちが揃って何かを飲みながら夜空を見上げていた。
今も自分が作った短歌を口ずさんでいる只三郎は、それが毎日の楽しみなんだって。
「これは花火と言って、うーん、夜に咲く…火の花、でしょうかね」
「ハナビ!!わーっ!すごいねえ…!」
声すら飲み込んでしまう。
どんなにはしゃいで大声を上げたって、今日だけは許される。
「朱花、朱花っ、こういうときは“たーまやー”って言うんだぜ!」
「たまや?」
「ああ!ほら上がった、せーのっ」
「たーーまやーーー!!!あははっ、たのしい!!」