奈落の果てで、笑った君を。
顔を赤くさせた隊士たちはいつもより上機嫌に絡んでくる。
ここに新撰組のみんなも混ざったら、ぜったいぜったいもっと楽しいのになあ…。
でもわたしは今のままでも十分っ!
「あれ?尚晴は?」
「ノブちゃんとスイカ用意してるってさー」
そう言った桂も、小さな器に水のようなものを注いでは嗜(たしな)んでいた。
「おい桂、なあ桂、」
「…なんだよクソすぎるガキめ」
「あのね、桂に教えてほしいことがあるの」
誰にも言っちゃダメだよ?と言うと、手にしていた器を膳に置いた桂は「ん?」と真面目に聞いてくれる。
こしょこしょと、その耳に投げかけた。
尚晴を見ると胸がドキドキすること。
嬉しくて、苦しくて、でも嫌なものじゃないこと。
これって何かなあ?と、至って真面目な相談だった。
「おーー、あららー。へえ、とうとうここまで育ったかー。お兄さんは嬉しいぞ朱花」
「桂!わたしすごく困ってるの!」
「うんうん。それはね、恋煩いっていうものだよお嬢さん」
「コイワズライ…?」