奈落の果てで、笑った君を。
「ほんと昨日の夜中はビビったよー。なんか聞こえるなあって思ったら、寝言で歌ってんのこの子」
「わたし?夜中は歌ってないよ?」
「そりゃあ、あんな気持ちよさそうにぐっすり寝てれば本人は気づくはずないんだよなー」
変わらない朝の朝食風景。
ガリッ、じゃりっ。
ガリガリ、バキッ。
「…ほら、この季節だし?最初は幽霊でも出たのかなって驚いちゃったよね俺」
「ユーレイ?それなあに?」
「んー、なんだろ。逆に分からないから怖い存在って感じかなー」
ガキッ、じゃりじゃりっ。
バキッ、グギッ。
「尚晴はユーレイ見たことある?けほっ、こほっ」
「…いや、ないな。俺は霊感もとくにない」
「そうなんだ!ごほっ」
ガキッ、じゃりっ。
ずずずっ、パキッ、ペキッ。
「……ねえ、なんかさ、食事中に聞こえちゃならないありえない音が聞こえるんだけど。
佐々木さん、これ俺だけの幻聴だったりしますー?」
「…朱花、1度箸を置きなさい」
「え?どうして…?」
「ほら、置いて」