奈落の果てで、笑った君を。
大失態の酒
「もうすぐ今年も終わるね」
早いねえ───と、白い息を吐いたノブちゃんは寂しげに微笑んだ。
「ノブちゃん、今年が終わったらどうなるの?」
「新しい年になるんだよ」
「新しい年…?」
「そうさ。今は慶應元年だから、次は慶應2年になるんだ」
じゃあその次は3年、もっと次は4年。
そうやって毎日は移り変わっていくらし
い。
これも前に尚晴が言っていた、世はムジョウだからなのかなあ…。
「ノブちゃん、疲れてる?」
「え…?」
「なんかね、ノブちゃんお顔のシワが増えた!」
「ははは。…歳は取りたくないものだね」
歳を取るってどんな感じ…?
顔のシワが増えると、どうなる?
わたしはいつまで今の姿のままなんだろう。
どうしてわたしの身体は、みんなとは違うんだろう。
部屋に戻ると、ちょうど尚晴もわたしを探していたみたいだった。
「尚晴もちょっと変わっちゃった…」
「…変わった?」
「うん。なんかまたシュッとなった!…わたしは何も変わらないなあ」