奈落の果てで、笑った君を。
賑やかな友
「疲れていないか。平気か?」
「へいき!」
「もう少し歩くと川が見えてくるはずだ。そこでひとまず休憩しよう」
「うんっ」
2度目の春が終わると、今度は夏がくる。
その夏も乗りきった秋涼の候、わたしは尚晴と一緒に京を出ていた。
『俺の故郷へ一緒に来るか?』
お正月に帰省しなかった尚晴に、そろそろ顔を見せに行ったらどうだと提案したのは只三郎だった。
夏は暑すぎるため長時間の道のりは危険と見て、ところどころ新緑色が焦がれてきては涼しくなってきた10月。
そんな彼の里帰りに、なんとわたしまで誘われたのだ。
「あ!川が見えてきたよ尚晴!」
「朱花、走るな。危ないだろう」
相模国(さがみのくに)。
そこが、尚晴が生まれ育った土地だという。
どんな場所だろう。
どんな人たちがいるんだろう。
高鳴る胸は、初めて会うだろう尚晴の両親に対しても抱いている気持ちだった。