奈落の果てで、笑った君を。
そして寝るとき。
これがわたしを悩ませるひとつだった。
木陰に背中を預けるように座った尚晴のお膝のなか。
すっぽり収まったわたしに羽織をかけて、その上から腕を回してくる。
「胸がドキドキする…」
「…俺もだ」
「じゃあ離れる?」
「…離れたいか」
「…や…、離れたくない…」
「…俺もだ」
一息一息、一言一言、わたしの耳にかすれて届いてくる。
守ってくれるのはありがたいけれど、寝る前にもこんなに近くに大好きな顔があって、起きたときも同じ。
なんていうか、すごく、落ち着かない…。
「びょうぶ、なくていいの…?」
「…もう必要ない」
「そうなの?どうして?」
「…俺が、こうしたいから…だ」
こういうとき、尚晴はまた大人になっちゃったように感じる。
見た目はぜんぜん変わらないわたしと、町を歩くと女の子から見られている尚晴。