奈落の果てで、笑った君を。
そうこうしているうちに共に旅をする仲にまでなっていた。
「俺はもう少し先の大坂に用があるんだ。じゃあな、お嬢ちゃん」
健やかに生きよ───、
そう言われた瞬間だけとても位の高い人間に見えた男は、満足げな顔をしながら去ってゆく。
そして大通りに着いてからはもっと、江戸とはまた違った賑わいを見せる町があった。
「ウチの饅頭が京でいちばん!ぜひ食べていっとぉくれやす~」
「今日は枝豆とさつまいもが安いで!ちょいちょい奥はん!見てってや!」
「なあにー!?フミ子ちゃんに相手ができたやと!?誰や誰やっ」
江戸とは違う、言葉。
また新しい世界を見てしまったみたいだ。
ここまで案内してくれた旅の仲間たちは皆、「京は治安が悪いからやめとけ」と言ってきたけれど。
世の中は対象するものがあった上で、比較して答えを見出すことができる。
だからこそ悪い治安というものを見てみたい好奇心には勝てなかった。