奈落の果てで、笑った君を。
「うわっ、また来はったわ」
「池田屋事件で功績を残したさかい。やからほら、鼻を高うしてるわ」
「治安維持やら言うて、所詮は自分らのことしか考えてへんくせに」
みんなが友達同士だと言うように笑顔を振り撒いていた町人は、途端に道を開けては噂を立て出す。
そんな人の流れに飲み込まれてしまって、なにが起こっているのかよく見えない。
でも、その目は知っていた。
卑しい目だ。
おれがずっと向けられつづけた、目。
「まだ見廻組のほうがマシやで」
「ほんまやわ。見廻組は幕臣ばっかなんやろ?ここも見廻組の管轄(かんかつ)やったら良かったのに」
みまわりぐみ……?
賑わいを見せていた大通り、町人たちは端に寄った。
「わあ…、空の色!!」
すると、開けた道をぞろぞろと集団になって歩いてくる男たち。
腰には刀、額には鉢巻、いちばんは目を惹く羽織の色。
鮮やかな青は、今日の空を映し出しているみたいだ。