奈落の果てで、笑った君を。




「うわっ、また来はったわ」


「池田屋事件で功績を残したさかい。やからほら、鼻を高うしてるわ」


「治安維持やら言うて、所詮は自分らのことしか考えてへんくせに」



みんなが友達同士だと言うように笑顔を振り撒いていた町人は、途端に道を開けては噂を立て出す。

そんな人の流れに飲み込まれてしまって、なにが起こっているのかよく見えない。


でも、その目は知っていた。

卑しい目だ。
おれがずっと向けられつづけた、目。



「まだ見廻組のほうがマシやで」


「ほんまやわ。見廻組は幕臣ばっかなんやろ?ここも見廻組の管轄(かんかつ)やったら良かったのに」



みまわりぐみ……?

賑わいを見せていた大通り、町人たちは端に寄った。



「わあ…、空の色!!」



すると、開けた道をぞろぞろと集団になって歩いてくる男たち。

腰には刀、額には鉢巻、いちばんは目を惹く羽織の色。


鮮やかな青は、今日の空を映し出しているみたいだ。



< 27 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop