奈落の果てで、笑った君を。
「しっかたねーなあ。斎藤くん、寄り道がてら送ってやろーぜ」
「…わかった」
「ありがと!」
言い合っていたはずのわたしから、笑顔ひとつ。
たったそれだけを見せると、ふたりはきょとんとさせてから空気を和らげた。
「んで、見廻組は?お前らはとくに変わりなくって感じ?」
「…みんな…変わっちゃったよ。わたしのこといつも放ってるの」
「ははっ、だから拗ねて家出してきたってことか」
違うもん、そうじゃないもん。
わたしがいない寂しさを分からせてあげようとしてるの。
へーすけ、わたし、サイトウ。
並んで歩く夕暮れ空の下、迎えに来てくれない心細さを感じているのはやっぱりわたしだった。
「へえー、でもあの見廻組ですら必死ってわけねえ…。これから世はどうなっていくんだろーな」
それまで笑っていた声は止まった。
へーすけもそんな顔するんだ…と、隣を歩くわたしが驚いてしまったほど。
「オレは天皇こそ立てるべきだと思ってるから、政権を幕府から朝廷に返すことは悪いことだとは思ってない」