奈落の果てで、笑った君を。
「ねえねえ、なにしてるの?その着物はどこに売ってるの?」
町人たちを掻き分けるようにして、大通りに出る。
先頭に立った男の足取りを阻むみたく真っ先に投げかけると、ざわっと、周りは静かながらにも騒ぎ立て始めた。
「あかん、あんなんしたら斬られてまうぞ…!」
「ちょっ、アホ…!あの子なに考えとるんや…!」
どうしてみんな道を開けるんだろう。
そんなに端に寄ってヒソヒソ話しかけるくらいなら、こうして堂々と面と向かえばいいのに。
「おれも欲しい!これで買える?」
そしてまた、お守りとして持っていた銭貸。
もし足りなかったらお金を稼ぐ方法を教えてもらおう。
「組長、こいつどうしますか?」
ひとりがボソッと、もうひとりに言う。
たったそれだけで町人はまたもや静かになってしまった。
なかには悲鳴を上げて逃げてゆく者まで。
「おまえ、よかったなあ。今日の巡察が土方(ひじかた)さんじゃなくオレで」