奈落の果てで、笑った君を。
と、へーすけはずっと黙ったままのもうひとりへ助けを求めた。
「大きな戦が起きる。幕府とて簡単には立場を渡すわけがないだろう。
そうとなれば…薩摩と長州が手を組んだ薩長軍と、新撰組や見廻組が迎え撃つ幕府軍のあいだで争いが起きることは避けられない」
いっきに難しいことを言ってきたサイトウ。
表情を崩すことなく、それはもう淡々と。
「どっちが勝つ…?」
「───…より良い未来を作るほう、だろうな」
なんのために戦うの?
どうしてより良い未来を作るために、争いなんかするの…?
だってそこで傷つくのはたくさんの命だ。
その戦で犠牲になるのは、その土地に咲く花の命であり、その土地に生える草木の命であり、その土地を流れる川の命であり、そこに生きる人の命なんだ。
「なあ、楽しい話しよーぜ。お前はやっぱ笑ってたほうがいいわ。…朱花」
ぽんぽんと、軽く頭が叩かれる。
沈みがちだったわたしを戻そうとしてくれているへーすけは、今だけでも笑顔を作った。