奈落の果てで、笑った君を。




「なぁにしてんだクソガキ!!!どこ行ってた!?家出!?なに、行くならちゃんと手紙置いて行かなきゃダメだろ…!!!」



それ家出じゃねーじゃん…と、へーすけの反応すら桂には聞こえていないようで。



「字、書けないもん」


「教えるよ明日から俺が!!!てかっ、そーじゃなくて!!こんな時間までどこ行ってたって聞いてんのお兄さんは…!!!」


「えーっと、トゲツキョ!」


「どこまで行ってんだよ!!?!?」



どうにもわたしは、かなり遠くにまで行っちゃってたみたい。


すると今度は違う匂いにふわっと抱きしめられて、そのあとすぐにぎゅうっと力強いものに変わった。


尚晴だ……。

やっぱり尚晴が来てくれると心が温かくなって、どうしてか涙が出そうになる。



「怪我はしていないか。変な人間について行ってはいないか。なにか良からぬものを食べさせられたり、……足はちゃんと付いているか」


「うんっ」


「………よかった……」



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