奈落の果てで、笑った君を。
尚晴と桂だけじゃない。
見廻組のみんながわたしのことを探してくれていたのか、揃って肩で息をしていた。
どうにもここに来ていない男たちは、島原へも探しに行ってくれているらしい。
「さすがに感謝してくんねーかなあ、今回は。ねえ斎藤くん」
「…もし俺たちが居なかったら、どこかで殺されていたやもしれぬ」
「そうそう。まあ頑固な見廻組さんには無理な話かもしれねーけどな」
わざとらしく響かせられた笑い声。
前は対立していた尚晴も桂も、今はどこか静かだった。
「……ありがとう」
「助かったよ斎藤くん。…もうこれ以上は言わないけど」
「お。本当に言ってくれたよ」
素直に頭を下げたふたり。
見廻組はこういうとき、野次を飛ばしたりする人間は居ない。
だからすんなりと、へーすけもサイトウも受け入れる。
「んじゃ、また会おーぜ朱花!」
「うんっ!またねへーすけ!」
それから帰宅すると、門の前に立っていた只三郎の心の底から安堵しきった「おかえりなさい」に出迎えられ。
なかに入ればノブちゃんお手製のご馳走が待っていた。