奈落の果てで、笑った君を。
「あのねえ、別に俺たちは朱花を放ってるとかじゃないんだからさー。だってもう家族みたいなもんだろう?
ちょっと機嫌が悪かったからって、こんな遅くまで心配かけさせるとかほんと心臓に悪いって。…聞いてる?」
「うんっ。これおかわり!」
「もちろん俺たちだって朱花の頑張りは知ってるし、むしろ俺たちがいちばん知ってんだから、邪魔者だなんて思うわけがないのー。…聞いてる?」
「うん!あっ、おとーふっ!」
「逆に朱花が居なかったらみんな揃って共倒れだよ。尚晴なんか朱花が誤って井戸に落ちたんじゃないかって自分まで入ろうとしてたからね?……って、ほんと聞いてる?」
「うんっ!尚晴っ、これおいしいよ!」
「だっからさー。……俺のぶんもあげるからいっぱい食べな」
「ありがと桂!」
ペラペラうるさい桂、わたしを背中からずーっと抱きしめつづけている尚晴。
次から次に料理を運んでくるノブちゃん。
なぜかよく分からない乾杯をしてはお酒を飲んでいる男たち。
すべてを見守るように微笑んでいる只三郎。
ここがわたしの居場所、ここがわたしのお家。
それでも。
この日が、へーすけに会った最後になった───。