奈落の果てで、笑った君を。
「では、留守番を頼みました」
空は真っ暗。
月すら見えない、夜。
桂、ノブちゃん、尚晴、残り数人の組員を引き連れた只三郎は、静かに屯所を出ていった。
「朱花、お前も今日は早く寝ろ」
「……折り紙つくる」
「…んなら、それ終わったら寝ろよ」
「…うん」
胸がざわざわする。
なにをしていても落ち着かない。
『へーすけ、セイケンが幕府のものじゃなくなったら……どうなるの?』
『そりゃあ、…新撰組も見廻組も、終わるしかねーだろうな』
山折り、谷折り。
ひっくり返して、また折って。
ううん、ちがう、こうじゃない。
『大きな戦が起きる。幕府とて簡単には立場を渡すわけがないだろう。
そうとなれば…薩摩と長州が手を組んだ薩長軍と、新撰組や見廻組が迎え撃つ幕府軍のあいだで争いが起きることは避けられない』
こうじゃないのに……どうしてできないの。
どうしてこんなにも簡単なことが、できないの。
たったひとりで作った折り紙は、今まででいちばん下手くそだった。