奈落の果てで、笑った君を。




そんなにもひとりになりたいのだろうか。
なにをしてきたのだろうか。

どこへ行って、だれに会ってきたの…?



「尚晴、折り紙つくったよ」


「………」


「これね、下手くそだけど…」



びょうぶを飛び越えて、わたしは目の前にそれを見せた。

ずっとうつむいている尚晴のちょうどな場所、藍色の和紙で折ったひとつ。



「……これは何を作ったんだ」


「下手すぎて分からない?」


「…ああ」



会話を返されたことが嬉しくて、下手だと言われてしまったことも面白くて。

場違いなくらいにふふっと笑ってしまうと、尚晴の握ったこぶしは逆に震えた。



「船だよ」


「───…っ」


「尚晴…?」



船───、

そう聞いた途端に手だけじゃなく、肩までもが震え出す。



「しょう、せー」


「っ…!」



どうしたらいいか分からないから、抱きしめるしかなかった。


折り紙が下手すぎたからびっくりさせちゃった。

こんなにも下手くそな折り紙を見たのは生まれて初めてだったのかもしれない。



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