奈落の果てで、笑った君を。
細長い棒状の、重量がありそうな何か。
町を歩いていたときから不思議に思っていた。
それを持っている人間と、持っていない人間がいること。
「…組長。こいつ、屯所に連れて行ったほうがいいのではないですか?」
「オレも思ったけど、話の通じない奴がいちばん嫌いなんだよな土方さんって」
チラッと横目で見つめられ、とりあえずニッと笑っておいた。
するとため息が聞こえる。
「こいつもしかすると、あの人の拷問にすら耐え切るんじゃねーの?」
「それは…確かに…、俺も思いました」
とんしょって、どこ?
ごうもんって、なに?
話すたびに疑問が浮かんで、すぐにでも知りたくなる。
牢に閉じ込められつづけた70年という歳月は、無知すぎる自分を作り出した、とてつもないものだった。
「おいお前、名前は?」
「なまえ?そんなのないよ?」
「はあ?あー、…まあ育ちはいろいろあるもんな」